その高さで大丈夫? 家づくりと高さの関係
暮らしやすい家づくりのためには間取りや動線など考えるべきことがたくさんありますが、意外と重要なのが「高さ」について意識すること。ここをあと数cm高くしておけば・低くしておけば…と建ててから後悔しないよう、使いやすい高さについてもしっかりと考えておきましょう。
各所のちょっとした高さの工夫が、快適でスムーズな暮らしにつながります。
動作ごとの高さの目安を知ろう
暮らしの中で日常的におこなう動作には、大きく分けて4つの高さがあるといわれています。まずは家の中にどのような「高さ」があるのかを知り、それぞれに最適な高さの目安をつかんでいきましょう。ここでは、日本人の成人女性の平均身長に近い約160cmの身長の方を例にご紹介します。
顔より上の動作(160㎝~200㎝)
立った状態で、無理なく手が届く高さの目安です。ものを出し入れする高さの限界ともいわれ、これ以上高いと踏み台が必要になることもあります。
- ハンガーパイプ、クロゼットや押し入れの枕棚の目安となる高さ
- 実際にハンガーをかけたり、枕棚にものを置いたりすると使いやすい高さがイメージしやすい
- この目安より高い位置に収納を設置する際は、収納するものや出し入れの動作をイメージしたうえで設置を検討すると良い
肩より上の動作(130㎝~160㎝)
壁のスイッチや給湯器などのリモコンを操作したり、モニターを確認したりする動作の目安となる高さです。
- モニター画面や操作パネルは、目線と同じくらいの高さが使いやすい
- いたずら防止のためにも、小さな子どもの手が届かない高さに設置すると良い
家事でよく行う動作(60㎝~130㎝)
調理など立った状態での作業は、おもにこの範囲で手元の動作がおこなわれるため、キッチンの天板やカウンターの高さの目安となります。
- 実際の動作をイメージし、自分が作業しやすい高さを確認するのが大切
- 収納に関しても最も見つけやすく取り出しやすい範囲となる高さ
かがんで行う動作(10㎝~60㎝)
腰を落としておこなう動作をする範囲。コンセントの位置や、ダイニングチェアやソファーの座面の高さの目安といわれています。
- コンセントの高さは、プレートの中心が床から25~30cmの高さに設置するのが一般的
- プラグを抜き差しする頻度や使用する機器などに応じて使いやすい高さを選ぶと良い
- 膝より低い位置に収納を設置する場合は、かがむだけでなくしゃがむ動作も想定して検討すると良い
これらの高さはあくまでも目安ですが、基準となる高さを知っておくことで暮らしやすい家づくりのイメージが描きやすくなりますね。
シーン別に使いやすい高さを考えよう
続いて、最適な「高さ」の決め方のアドバイスを部屋ごとにご紹介します。
収納やカウンターの高さはもちろん、家具選びの際にも参考にしてください。
リビング
家族みんなが集まるリビングは、ライフスタイルに合わせた高さ選びが大切。リビングに置くテーブルは、ソファーとフロア、どちらに座って過ごすことが多いのかに注目して高さを選びましょう。
- ソファーに座ってテーブルを使用するなら、テーブルの高さは座面の高さからプラス5cmまでの範囲がおすすめ
- テーブルが低いとカップやグラスを取る際に前かがみになって使いづらい
- 逆に、テーブルが高すぎるとソファーに寝転がってテレビをみるときに視界の邪魔になることも
- リビングテーブルで食事やパソコン作業をすることが多いなら、背筋が立つよう座面プラス8~20cmの高さが使いやすい
- フロアに座ってテーブルを使うスタイルなら、天板の高さは床から30~38cmが目安
キッチン
調理や洗い物など立った状態でおこなう手元の作業がメインとなるキッチンは、作業スペースとなる天板や収納の高さがポイント。家族のなかで一番多くキッチンに立つ人にとって使いやすい高さを第一に考えて選びましょう。
- 天板の高さで人気が高いのは、床からの高さが85cmのタイプ
- 最適な天板の高さを決める目安のひとつとなる公式は「身長÷2+5cm」といわれている
- 身長160cmの方にこの公式を当てはめると85cmとなる
ただし、身長はもちろん腕の長さや腰の高さなどは人によって違うため、自分にとって使いやすい高さも異なります。実際にキッチンに立ち、本や板など厚みのあるものを使ってまな板の高さを調整してみると、使いやすい高さが見つけやすくなります。
また、キッチンまわりに吊戸棚を設置する場合、天井までめいっぱいの収納にすると容量は増えますが、手の届かない棚は結局使わず無駄になってしまうことも。
目線の高さから10~15cm低いラインを戸棚の下端にし、高さは70cm程度にすると使い勝手が良いといわれているので、ひとつの目安として参考にしてください。
ランドリールーム
脱衣室などに室内干しのスペースを備えたランドリールームは、共働きの世帯を中心に人気の高い間取り。最近では、洗濯物をたたんだりアイロンがけしたりできる作業カウンターを設置する方も増えました。このようなカウンターも、ライフスタイルによって使いやすい高さが異なります。
- 立って作業するのか座って作業するのか、あらかじめしっかりイメージしておくことが大切
- 座って使う場合は、椅子の高さや置き場所も考慮するのがポイント
- カウンター下に収納を設置する場合は、高さだけでなく奥行きにも注意
小上がりの和室
「小上がり」とは、床面をほかより高く設けた場所のこと。リビングの一角に小上がりの和室(畳コーナー)を設置するスタイルも人気があり、腰を掛けたり畳に横になったりと、くつろぐスペースとしても活躍してくれます。
- 小上がりの和室の高さは段差20~40cmでつくることが多い
- 低すぎるとつまずきやすく、高すぎると転落の危険性や上り下りのしづらさにつながるので注意
- 段差部分に引き出しを設けることで収納力アップも見込める
家族や将来を考えた高さ設計をしよう
ここまでにご紹介したのは、あくまで「一般的に使いやすい」とされる高さの基準です。身長や使い方によっては基準の高さが使いづらい場合もあるので、家づくりの際には普段何気なく使用しているものの高さを改めて意識して、ご自身やご家族にとってベストな高さを確認しておきましょう。
また、造作洗面台やつくり付けのカウンター、コンセントの位置など、後から移動や撤去することが難しいものはとくに注意が必要です。ライフスタイルが変化した際に使いにくくならないよう、将来をしっかりイメージして高さやサイズを検討しましょう。
設計士やプランナーとの打合せの際は、次のようなポイントをおさえて要望を伝えてみてください。
- 一緒に暮らす家族全員の年齢や身長、体格など
- 収納の場合は、しまうもののサイズや量のイメージ
- カウンターやデスクは、誰がどのように使うのか
使いやすさと暮らしやすさににだわり、自由設計で建てる棟匠の家
使いやすい高さやサイズは、ライフスタイルや使う人の体格によってそれぞれ異なります。この機会に、いまの暮らしで「使いづらいな」「危ないな」など不便や不安を感じている部分がないかどうかご家族で話し合ってみてはいかがでしょうか。
棟匠では、カウンターや収納、家具などをオリジナルで造作することもできますので、お気軽にご相談ください。
暮らしやすさがいっぱいの棟匠の住まいの実例も、ぜひご覧ください。